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夜が明けて・・・

 母はまもなく玄関に近い部屋へ移されました。

『先生が来られるのは9時過ぎです。それまでに着替えを済ませましょうね。あのパジャマでいい? お化粧はどうする?』
とナースに聞かれました。
『紫の小花模様の、あのパジャマを着せてやってください。お化粧もしてやってください』
とお願いしました。

 職員さんが3~4人で清拭、着替えを終えると、部屋に案内されました。ナースが化粧品を持ってきました。
『入れ歯を入れようね』
と母に語りかけながら、何度か試みてくれましたが、3年以上もはずしたままだったので口に収まりませんでした。おちょぼ口もかわいいので、そのままに、とお願いしました。
 ファンデーションをつけ、薄いピンクのアイシャドウをつけると、微笑んでいるように見えました。

『お母さん、アイシャドウは2回目じゃなぁ・・・』
と声をかけながら、入所したころのことを思い出していました。
 あの頃は月に一度化粧品店の方が来られて、お年寄りのために『メーキャップ教室』が開かれていました。その日は母も参加したらしく、車椅子に座った母は見たこともないようなけばけばしいお化粧を施されていました。青いアイシャドウと真っ赤な口紅。息を呑んでのけぞるようなメーキャップで、それでも母はうれしそうに笑っていたのです。喜んでいる母には、
『きれいになったなあ』
と言いましたが、(ここまでせんでも・・・)と内心憤慨しながらも車椅子を押して部屋へ連れて行きました。部屋への道中、車椅子を押しているのがわたしだと忘れている母は、
『娘が見たらびっくりするでなぁ』
と繰り返しました。
(ハイハイ、もうびっくりしとりますでぇ・・・)
と思いながら歩きました。途中、廊下の壁に鏡がありました。鏡に映る自分の顔を見て、
『こりゃあ、どうしたんな!』
とおどろく母が可愛かったです。そして鏡に私の顔を見つけると、
『ありゃ、おまえはいつ来たんな!』
ともう一度母はおどろきました。
 そんな思い出もあります。

 眉を少しずつ描いていき、おちょぼ口に口紅を指して貰うと、母の顔が見る見るきれいになっていきました。

 時刻は6時を過ぎていました。母のそばに次兄を残し、ロビーの椅子に兄と腰を下ろしました。
 何度も話し合って決めていたのに、
『やっぱり、家にはつれて帰られんなあ・・・』
と母をこのまま葬祭ホールに連れて行くことが兄もわたしも心残りでした。家につれて帰ってあげたかったのですが、何年も家は締め切ったままで、最近は雨漏りもするようになっていました。家で葬儀をするには無理がありました。
 実家の近所に叔父(父の弟)がいます。よくもしてくれますが、、なかなか気難しい人です。
『一度も家につれて帰らんかったら、怒るよなあ・・・』
 最近は叔父も認知が始まったようで、
『おじさんが呆けとって、よかったわ』
と兄と話しました。

 施設長さんが足早にやって来ました。
『言うの忘れてたけど、葬儀場は24時間受け付けてますよ。もう葬儀の申し込みはした?』
 兄と私が顔を見合わせるのを見ると、
『早くしないと、予約が入ってたらできないよ』
と葬祭ホールの電話番号を教えてくださいました。

 それから急にあわだたしくなりました。

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Author:ゆいかばあば
《どうにかなる!》で いろんな坂道を歩いてきました
おもしろおかしく 笑って暮らしたいと思っています



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