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母からの手紙

 高校を卒業後、大阪へ就職した。大阪へは母がついてきてくれた。荷物を寮に運び、明日は帰るという夜、母はわたしに『いっしょに寝るか?』と言った。母といっしょに寝たことがなかったわたしは、一人がいい、と言った。
 朝目が覚めると、母が隣で寝ていた。いつわたしのふとんに入ってきたのか、わたしは気がつかなかった。母の気持ちをわかってあげられなかったことを私は後悔していた。
 母は、一人帰っていった。あとで聞いたことだが、母は大阪へひとりできたのははじめてだったらしい。帰りに梅田で迷って、「奥さん、どちらまで?」と聞かれても、「さぁ、どこでしょうなあ?」と答えたらしい。

 事務員ということで就職したのに、初日から現場の仕事だった。8時から6時までの仕事で、男性は通勤の人も入浴して帰って行った。みんなが入った後私が最後に入浴して、お風呂掃除を済ませると11時を回った。時々朝食も作らなければならなかった。
 女の子はわたし一人で、話相手もいなくさびしかった。状況を父に手紙で知らせて、帰らせて、と頼んだ。

 母から手紙がきた。
『おかあちんは おまへがかはいくて かはいくて。
 どこへいってもおんなじことよ。
 1ねんはしんぼうしなさい。
 さびしかったらにいさんのところへあそびにいきなさい。
 あみものでもしなさい。』
そして、かぎ針が1本同封してあった。

 十三駅の近くだったので、駅のほうまで出て、手芸品店で毛糸を買ってきた。
編んではほどき、編んではほどきして、さびしさを紛らわせていた。

 会社は化学工業だったので、シンナーを使っていた。仕事中、頭が痛くなりうつむいていると、近くにいた人から、『昼寝ならあっちでしなさい』と言われ、部屋に帰りそのまま新大阪から新幹線に乗り帰ってきてしまった。
 
 大阪には2ヶ月しかいなかった。父には叱られると覚悟していたのに、父は何も言わず、『編物を習いに行きなさい』と言って編み機を買ってくれた。

 母からの手紙は今も箱の中に大事に取ってある。時々出しては読み返してみる。
 
 おかあちんはおまへがかはいくて かはいくて・・・
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《どうにかなる!》で いろんな坂道を歩いてきました
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